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退職の意思表示をするに当たっては、自らの意志が固まっているかをあらためて確認しておきたい。 意志が固まっていなければ、強い引き留めにあったときに気持ちが揺らぐもの。結果的に残ることになった場合も、一度退職の話を切り出したことで気まずい状況になることは否めないし、その後の昇進・昇格に影響する可能性もある。 退職を切り出す前に、今後のキャリアプランや実現したい将来のライフプランなどを長期的な視点からもう一度見直し、不平不満などの一時的な感情に流されていないことを確認しておこう。
 退職の意志が固いことが確認できたら、まずは直属の上司に話を切り出そう。テレビドラマのように、退職願をいきなり突き付けて「辞めさせていただきます!」というのでは、あまりに唐突。 最初は「ちょっと相談があるのですが」と、あくまで相談という形で持ち掛けるべきだ。
 注意したいのは、直属の上司より先に部長や社長などに話さないこと。直属の上司の管理能力が問われかねないし、何より本人の機嫌を損ねることで、後々引き継ぎの話し合いなどで困難が生じる恐れもある。 同僚や先輩などに話し、そこから上司の耳に入るのもトラブルのもとだ。相談したくなる気持ちも分かるが、よほど信頼のおける相手以外は、退職を口にするのは極力避けた方がいいだろう。



同僚や部下への退職の伝え方

直属の上司に退職の了解を得たからといって、すぐに同僚や部下、顧客に公表すべきではない。 退職の相談を受けた後、直属の上司は後任をどうするか、業務を滞りなく進めるにはどうしたらいいか、退職時期に問題はないかなど、部長や社長と話し合って方針を決定する。 退職が正式に決定し、周囲に広報されるのはその後だ。何も決まらないうちから退職の話だけが伝われば、周囲の混乱を招くことにもなりかねない。
 顧客や取引先も同様。後任者が決まってもいないのに、退職の話が伝わることで、「今後の取引はどうなるのか」と余計な心配をさせることにもなる。 直属の上司からの正式な通達があるまでは、自分から話すことは避けよう。



退職理由の伝え方

退職理由を聞かれたら、個人的な理由を話すのが円満退社のコツだ。 退職を決意するからには、現状に何らかの不満があるのは当然のことだが、いくら辞めるからといって、これまでの不平不満を洗いざらい話してしまっては、元も子もない。 上司にしても、気分を害さないまでも、「来年から改善する」「希望の部署に異動させる」「給与を上げる」など、引き留めの材料にされる可能性もある。 円満退社したいなら、どんな理由があろうと、不平不満を述べるのは極力避けることだ。
 同僚や部下に対しても同じこと。残る側にしてみれば、あれこれ不満を言われるのは、あまり気持ちのよいものではない。 周囲に快く送り出してもらうためにも、「やりたい仕事がある」「キャリアアップしたい」など、前向きで納得のいく理由を話すのがベストだろう。



退職届けの書き方

■用紙、筆記具
白地の縦書きの便せんに、黒インクの万年筆かサインペンで書く
■表題
必ず「退職願」とし、1行目のほぼ中央に書く
■書き出し
本文の書き出しは「私事」あるいは「私儀」。表題から1行あけた次の行のいちばん下に書く
■退職理由
「一身上の都合」とだけ記入
■退職日
上司と相談して決めた日付を記入
■届け出年月日
退職願を書いている日ではなく、退職願を提出する日付を書く
■署名、押印
所属部署と名前を書き、その下に押印
■あて名
あて名は社長名。自分の名前の位置は社長の名前より下にする
■封筒
白地の縦長の封筒を使用。表の中央に「退職願」、裏には部署名と氏名を書く

(記入例)



業務の引継ぎ

引き継ぎでは、これまで携わってきた仕事内容や仕事の進め方を、できるだけ詳細に伝えることが大事だ。 後任者が決まったら、できる限り時間を割いて細かく打ち合わせ、時間が取れれば、一連の業務を後任者と一緒にやってみる。そうすることで、後のトラブルを防ぐことにもつながる。だが、お互いに時間に余裕がなく、後任者も一度説明されただけでは理解できないこともあるだろう。
 そのためにも、引き継ぎ業務の内容はできるだけ文書にして残し、ファイルにする、あるいはパソコンの共有フォルダーに入れるなどして、退職後も後任者が無理なく仕事を進められる体制をつくっておこう。
 担当業務・案件ごとにファイルやフォルダーをつくる際に、整理する内容は以下の通りだ。

@ その業務・案件の目的や社内での位置づけなど、総体的な業務の説明
A 実際にいつ、何をすべきかのフローチャート。業務の段取り、進捗状況、優先順位、今後の見通しや不測の事態への対応の仕方
B これまで起こったトラブルの経緯
C 業務上必要な資料や、これまで作成した書類もファイルに残し、関連書籍などは所在を明確にする
D 関連する部署、取引先、顧客の連絡先も案件ごとにまとめる。担当者名だけでなく、趣味や折衝時の注意点なども一緒に伝えると重宝される

 これらの書類や文書に、それぞれ「業務フローチャート」「担当者連絡先」など、分かりやすい名称を付けておく。
 なお、職種によって引き継ぐ内容や方法も異なる。営業職なら、過去の取引状況や契約内容、今後のニーズ、そして先に述べた顧客情報を伝えることが最も重要だ。SEなど技術職の場合は、案件ごとに仕様書や必要書類をまとめ、プロジェクトの進捗状況などが一目で分かるようにしておく。
 また、本人にしか分からないトラブルの内容や、緊急の用件が発生する可能性もあるので、後任者や上司には退職後も連絡が取れるよう、携帯電話の番号や個人のEメールアドレスを伝えておいた方がいいだろう。



退職時の会社に返すもの

健康保険被保険者証は、退職後は使えないので返却する。転職先が決まっていれば会社が新たに加入手続きをするが、そうでなければ国民健康保険に加入するか任意継続被保険者制度を利用する。
 身分証明書、社員章、制服、名刺など、社員としての身分を証明するものや、通勤に使っていた定期券も返却する。
  会社の経費で購入したり、会社から支給された書籍や文房具なども返却する。取引先や顧客の名刺も、原則的には返却すべきものだ。持ち帰りたい場合は、問題がないか、上司に確認を取ってからにしよう。
  パソコンに保存したデータは業務の一部。自宅のパソコンで作成した資料も、守秘義務があるものは記録媒体に移して返却し、ハードディスクにあるものはすべて消去。自宅に持ち帰った企画書や図面など紙の資料も、忘れず会社に返却しよう。

【返却するもの】
●健康保険被保険者証
健康保険は、加入者が会社を辞めた時点で脱退する仕組み。転職先が決まっていれば、その会社の健康保険に新たに加入し、そうでなければ国民健康保険に加入するか、任意継続被保険者制度を利用する。
●身分証明書、社員章、名刺
その会社の社員であることを証明するものは、すべて返却。仕事で受け取った取引先の名刺についても、会社から返却を求められる場合がある。
●通勤定期券
退職と同時に返却。
●制服
クリーニングに出すか、洗濯してから返す。
●その他
社費で購入した書籍や事務用品など。自身で手掛けたとはいえ、業務で作成したプログラム、図面、フォーマットなどの制作物、業務で使用した資料も残す。